マンションを売却したいと思ったら、まずは査定。その方法とポイントを押さえる
マンションを売却したい場合は、いくらで売却できるのかが気になります。少しでも高い価格で売却したいところですが、価格にこだわりすぎると売却までにかかる時間が長くなってしまいます。こうした時に利用できるのが査定です。では、マンションの査定方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
代表的な査定方法3つ
ここでは、マンション査定に用いられる代表的な3つの方法について紹介しています。
もっとも多く使われる「取引事例比較法」
マンションの価格を査定する際に、最も多く用いられるのが、取引事例比較法です。この方法では、査定対象となるマンションと条件が似ている物件の取引価格を参考にして、査定額を決定します。
さすがに参考にする物件とすべての条件が完全に一致することはありません。そのため、建築年数や周辺環境などを精査し、差がみられる項目については、査定額を決定する際に考慮することになっています。ただ、どの項目をどの程度重視するかは、査定を行う業者によって異なります。
取引事例比較法では、実際の取引価格をベースにして査定額を算出します。そのため、実勢とかけはなれた査定額になってしまう可能性は低いです。
いっぽう、取引事例が少ない場合は、取引事例比較法で査定を行うことは困難です。周辺に同様のマンションが立地していない場合は、取引事例比較法が使えない可能性を頭に入れておきましょう。
また、築年数が長い、古いマンションでも取引事例比較法による算出は困難です。まず、古いマンションであれば、取引事例が少なくなっている可能性があります。加えて、古くなればなるほど、いたみの程度に差が出てきます。そのため、築年数が全く同じマンションがあったとしても、同じ価格で売買が成立するとは限りません。古いマンションの査定を希望している場合も、取引事例比較法が使えないかもしれないと考えておいてください。
投資物件の査定で使われる「収益還元法」
マンション査定の方法としては、取引事例比較法のほかに、収益還元法があります。収益還元法は、投資物件の価格を査定する際に用いられる方法です。この方法では、取引事例比較法では査定額が算出できないケースでも査定が可能な場合があります。
ただし、収益還元法はあくまでも投資物件の査定で用いるのが一般的です。したがって、投資用物件としてではなく、居住用など実需での売却を見込んでいる場合は、査定額と売却額との間にギャップが生まれやすくなります。実需での売却を予定しているなら、査定方法を収益還元法ではなく、取引事例比較法で行ってもらうようにしましょう。
収益還元法では、今後、物件を貸し出すなどして得られる利益額をもとにして、現在の不動産の価値を計算します。この方法では、将来得られる利益額が不確定な場合は、適切な査定を行いづらくなってしまいます。また、将来得られる収益を現在価値に割り引く際の割引率をいくらに設定するかによって、査定額に大きな差が生まれることがあります。査定額だけを結果としてみるのではなく、査定額を算出した方法についてもきちんとチェックしておきましょう。
現場でほぼ使われていない「原価法」
マンション査定を行う方法には、原価法もあります。この方法は現場ではほぼ使われていない査定法です。基本的には取引事例比較法や収益還元法が用いられると考えておきましょう。
原価法では、再調達原価、すなわち査定対象の不動産を再び建築する場合にかかる費用をベースにして査定を行います。再調達原価をそのまま査定額としてしまうと、築年数が経過することによって減少する価値が査定額に反映されません。そこで、減価修正と呼ばれる、経年による価値減少額を反映させる手順を踏み、査定額を決定します。
原価法では、再調達原価、および減価修正額がどの程度正確に算出できるのかに疑問が残ります。これらが正確に算出できていれば原価法での査定が有効なのですが、現状では、取引事例比較法や収益還元法のほうが信頼できるとして、利用される頻度が高くなっています。実需を見込んで売却するなら取引事例比較法、投資用物件として売却予定なら収益還元法によって査定を行うのが一般的といえます。
机上査定と訪問査定
査定を行う方法を3つ紹介しましたが、これらの査定は、インターネットやファックスを通じて行う場合と、実際に売却対象となるマンションを訪問して行う場合があります。
机上査定
机上査定とは、鑑定士が物件を実際に訪問せずに査定額を算出する方法です。この方法では訪問査定と比べて精度が落ちてしまいますが、複数の業者に査定を依頼しやすいといったメリットがあります。ファックスなどで必要情報を送る方法のほか、インターネット上で査定を完了させることも可能です。
机上査定に用いるのは、査定対象となるマンションの間取りや立地地域、売却を希望するタイミングなどの情報です。これらの情報をもとに査定を行えば、おおよそどのくらいの金額で売却が可能かを判断することができます。
机上査定の具体的な利用方法としては、住み替えを行う場合が挙げられます。住み替え先の住居をどこにするかを決定するにあたり、現在住んでいるマンションがいくらで売れるのかは重要なポイントです。もし高値で売れるなら少し高めの価格の住宅に住み替えられる一方で、売却価格が低くなりそうなら、安めの住宅を検討する必要があるからです。机上査定の金額を見て、どのくらいの金額で売却できそうか、おおよその見当をつけておくとよいでしょう。
また、実際に売却する際にどの業者を通すと高値で売却できそうかを判断する材料にもなります。査定額はあくまでも参考なので、査定額通りで売却が成立するとは限りません。しかし、査定額がわかれば、おおよそどのくらいの金額で売却できるかが把握できます。また、複数社に机上査定を申し込めば、1社だけ大きくかけ離れた査定額を出してきた業者を信頼できないとして除外することもできます。
机上査定は早い場合だと1時間以内に査定額を知ることができます。そのため、手軽に複数社に机上査定を申し込み、おおよその売却価格を把握しておくとよいでしょう。もし机上査定の結果に満足できたのであれば、次の訪問査定を行ってもらいましょう。
訪問査定
マンション売却にあたり、机上査定よりも正確な査定額を出すためには、訪問査定を行います。訪問査定ではその名の通り、実際に査定対象の物件を訪問し、室内や周辺地域の状況を確認します。提出書類上の数値データだけではなく、実際に目視で鑑定士が確認することによって、査定額の正確さが増すのです。
ただし、訪問査定を行う鑑定士のとらえ方によって、査定額に幅が生まれます。最初に算出された査定額に疑問を感じる場合は、他の業者にも訪問査定を行ってもらうとよいでしょう。
訪問査定では実際に住居を訪問されます。そのため、安易に多数の業者に申し込みすぎないよう、注意が必要です。まずは机上査定で各業者の査定額をおおよそ把握した後、信頼できる業者にのみ訪問査定を依頼してください。適切な査定を行う意志に乏しく、室内の状況をチェックしたいだけなどの悪質な業者に引っかからないように注意しましょう。
正確な売却価格に近い結果を出しやすい訪問査定ですが、必ずしもすべての不動産売却において用いられるわけではありません。居住用として実需を見込んで売却する不動産であれば、室内の状況の良しあしなどによって、売却価格が異なります。そのため、訪問査定が望ましいといえます。いっぽう、オーナーチェンジの際の査査定など、賃貸中物件が査定対象の場合は収益還元法で最終的な査定金額を出すことが多いです。わざわざ訪問査定を行わずとも、現状の収益状況を確認すれば、どの程度の収益性が将来的に確保されるかを把握しやすいからです。また、賃貸中の物件であれば、居住者の了解をとって訪問査定を実現するハードルが高いケースも考えられます。絶対に訪問査定を行わなければならないわけではないので、査定方法について堅苦しく考えすぎる必要はありません。
査定で注意すべきポイント3つ
査定を行ってもらう際には、注意すべき点がいくつかあります。注意点を踏まえたうえで査定結果を分析することで、よりよい売却につなげることができますよ。以下に3つのポイントを示しているので、確認しておきましょう。
仲介業者の査定金額と買取業者の査定金額は性質が違う
査定を受けた際には、仲介業者が示した査定金額と、買い取り業者が示した査定金額の性質の違いに注意してください。
まず、仲介業者が示した査定金額は、高めに見積もられている可能性があります。というのも、仲介業者は媒介契約を確保したいと考えているからです。査定金額が低いと、売却をためらう人が増えてしまいます。そこで、少し無理をしてでも高めの金額を提示することで、媒介契約を成立させようとする業者があります。こうした業者の査定金額を信用してしまうと、売れるまでに長い時間がかかってしまう可能性が高まるので注意が必要です。こうした悪質な業者ばかりではありませんので、複数の仲介業者から査定を出してもらい、いかにも高額の結果となっている査定は排除して考えましょう。
いっぽう、買い取り業者が示す査定金額は、自分たちが買っても良いと考える金額です。したがって、査定金額はやや低めに提示される可能性があります。とはいえ、あまりにも低い金額を提示すると、売却をやめる人が出やすくなります。そのため、買い取り業者が示す査定金額は高すぎたり、低すぎたりといった可能性が小さいです。
このように、一口に査定といっても、仲介業者による査定と、買い取り業者による査定とでは、査定金額の性質が異なるといえます。したがって、実際にどのくらいの価格で売却できるのかを判断したい場合は、仲介業者と買い取り業者の両方から見積もりをとってみても良いでしょう。また、いずれのタイプの業者も複数社に査定してもらうことで、現実とかけ離れた査定額を出している業者がないかチェックすることができます。
購入時の金額は査定に関係ない
査定を受けた際に、購入時の金額と比較してしまうケースがあります。ところが、購入金額は、査定金額とは無関係です。いくら高額で購入した物件であっても、老朽化が進んでいたり、交通の便が悪くなったりしていれば、査定額は低くなってしまいます。また、売却物件が豊富にあるタイミングだと、比較的新しい物件であっても、査定額が低めに出てしまうことがあります。高値での売却にはタイミングも大切であることがわかります。
いっぽう、購入金額がそれほど高くなくても、住環境が大幅に向上した場合などは、予想よりも高い査定金額になることがあります。売却を検討している物件の価値が上がっているのではないか、と思える要素があれば、査定金額が高めにならないか期待してみましょう。
このように、査定金額はあくまでも「現時点で売れる金額」です。したがって、売主がどれだけ高く買っていても査定には関係しません。自分が購入時に高い価格を支払ったからといって、査定額に過度な期待をしないようにしてください。
査定金額を冷静に判断する
マンション売却を検討している段階で気軽に査定を依頼したところ、示された査定金額を見て、驚く人もいるのではないでしょうか。特に、長年住み慣れていて思い入れがあるマイホームの査定金額に、納得がいかない人もいるでしょう。
確かに売り主からすれば、自分が長年住んだ物件に誇りを感じることも無理はありません。しかし、もし自分買主だったら、と冷静に考えてみることも必要かもしれませんよ。「住めば都」という言葉があるように、長年住んでいた人には祖の場所の価値が高く感じられることがあります。買主の立場から考えてみると、納得できる査定金額になっているかもしれません。自分の主観だけで査定額が低すぎると結論付けることがないよう、注意してください。
とはいえ、買主の立場に立って考えても、査定額の低さが気になることがあります。どうしても納得がいかない場合は査定金額の根拠を詳しく業者に聞いてみるのも1つの方法です。納得できる理由でなければ、別の業者に査定を依頼し、どのくらいの金額差が出るのかを確認してみましょう。もしそれほど大きな差が出なければ、やはり客観的に把握される価値は査定金額程度である可能性が高いといえます。査定金額はあくまでも査定なのでその価格通りで売れるとは限りませんが、客観性のある価値判断には有効です。自分の主観だけに基づいて価値を判断し、査定金額に腹を立てることのないようにしてください。
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