マンションの買取は難しい?買取業者も売却に失敗することがある

このところ、不動産市場においてリノベーションが活況を呈しています。特に、中古マンションのリノベーション物件はメディアでも取り上げられることが多く、販売件数は増加傾向にあります。そのリノベーションマンションですが、売主が個人ではなく、不動産会社が売主となっているケースが多く見られます。

 

不動産を売却する際、一般的なスタイルとして、個人の売主が不動産会社に売却を依頼し、広告等で買主を募る「仲介」が主流ですが、昨今では、中古物件を買い取ってリノベーションを施し、自ら売主となって再販売する「買取業者」が増えてきています。ただ、そんな買取業者の中にも競争原理はあり、計画通りに買取再販売事業を進められないケースもあるようです。そこで今回は、買取業者が抱える問題や厳しい環境についてお話ししていきたいと思います。

買取金額が高すぎて失敗するケース

仲介物件を売却または購入する際は、不動産業者に対して仲介手数料を支払う事になりますが、買取業者など業者自身が売主となる物件については、仲介手数料は発生しません。そのため購入検討者としては、どうせなら少しでも出費が少ない方をと、買取業者の物件を選びます。そうなると、不動産仲介業者としてはより集客が見込める買取再販売事業へと徐々にシフトして行くこととなり、買取業者の数はここ数年で急増しました。

 

同業者の数が増えれば自ずと競合が増え、業者間で熾烈な買い取り競争が行われるようになります。買取業者にとって仕入れ(不動産を買い取ること)がなければ会社が成り立ちませんから、他社より少しでも早く売却情報を入手し、競合が現われたらギリギリの価格を提示することになります。なかには、無理して高値で買い取ってしまい、販売時に苦労したり、赤字で売却するような失敗例もあるのです。

工事費用が見積もり以上に掛かって失敗するケース

買取物件の仕入れルートには、一般個人から購入するもの以外に、競売や任意売却によるケースもあります。それらの中には、設備破損や状態の悪さから予想以上の工事費用が発生してしまい、計画通りの予算で納まらない場合もあります。加えて、昨今の資材費の高騰や職人不足の影響によって、見積りを事前に入手したにも関わらず、金額が値上がりする事態も起きたりします。

販売開始が遅れると、さまざまな負担がのしかかってくる

買取業者は、物件の仕入れから販売に至るまでにさまざまな工程をこなしていきます。その工程にはどのようなものがあるのか、下表に工程の概略を記載します。

 

工程・業務内容

① 役所調査

各行政機関への訪問・問い合わせを行い、法的に問題を抱える物件かどうかを調査する。

② 市場調査

取引事例の収集や聞取り調査を行い、相場価格はどれくらいか、スムーズな販売が可能な物件かを調査する。

③ 事業計画

経費はどれくらい掛かるのか、利益はどれくらい見込めるのか、販売に要する日数はどれくらいか計画を立てる。

④ 仕入契約

①~③で事業可能と判断した物件について購入契約を結ぶ。 一定期間後、代金支払いとともに引渡しを受ける。

⑤ 工事手配

事業計画によって算出した予算内で、工事業者・職人の手配、部材の発注を行う。

⑥ 工事着手

計画通りの期間で工事が完了するよう作業工程を監理する。 期間中に事故等がないよう定期的に現地を巡回する。

⑦ 販売開始

買主を早期に見つけて契約できるよう、工事期間中も含めて、現地およびネット上で販売告知を行う。

 

これらのうち①~④については、まだ代金全額の支払いも完了していない段階であるため、契約時に支払う手付金以外に大きな経費は発生していません。④以降についてはすでに代金全額を支払っているため、できるだけ早く販売をスタートして買い手を見つけることが優先されます。そのため、検討客への認知度を上げようと、工事期間中であっても販売告知を行うことになります。ただ、買い手の心理としては完成後の状態を見てから購入するかどうか判断するのが一般的です。そんな中で、工事業者の手配がつかなかったり、工事に思わぬ時間が掛かってしまうと、販売に支障を来たしてしまいます。

大規模マンション買い取りのリスク

世帯数が100戸以上あるような大規模マンションの場合は、世帯数の多さから同じマンション内で販売物件が重なることも考えられ、そうなると、価格の安い物件に買い手が流れることもあります。さらに、同じマンション内で複数売り出されている状況から、「こんなに売り出されているのは、何か問題のあるマンションなのでは?」と勘ぐられる可能性も有り、販売に影響を及ぼすことも考えられます。

立地条件や間取りが原因で販売に苦労する

一般的に、「マンションは遠くても駅のそば」と言われるように、利便性の良い立地条件であることが多いでしょう。でも、なかには郊外の団地に建てられたマンションもあり、交通がバス便のみというところもあります。また、間取りが独特で一般ウケしない物件というのもあります。そのような物件は買い手の反応も悪く、販売に時間が掛かるケースもあります。

販売が滞れば、資金が行き詰まる?

工事理由、大規模マンション、問題を抱える物件など、さまざまな理由で販売が遅れれば、それに連れて契約も引渡しも遅くなり、買取業者の資金回収がどんどん後回しになって行きます。買い取りと販売を次々にこなすことで事業を回す買取業者にとって、資金回収が滞ることは血の流れが止まることを意味します。

 

加えて、買取業者の中には、金融機関から借り入れた資金で物件を購入するところも多く、販売に時間が掛かると、金利負担が重くのしかかってきます。買取業者など、企業が不動産購入する際の融資は住宅ローンとは扱いが異なり、金利が高く設定されるため負担が大きいのです。また、築年数が古いマンションの場合は、管理費、修繕積立金、駐車料金が高くなっているため、これも事業を圧迫する要因になります。

 

工事に時間が掛かったり販売が滞ることによって、業者の負担は二重三重になってくるのです。

こだわりすぎたリノベーションで失敗

活況を呈するリノベーション市場の中で、いかに独自性を出すかという事も選ばれるポイントになるでしょう。そのため、最新の設備を導入したり、より広く見せるために間取りを変更したり、こだわりの内装でデザインを一新するなど、時にはサプライズの要素も盛り込んで差別化を図り、使い勝手よりも見た目重視の仕上げを施すことがあります。しかし、前項でも触れたように、不動産の場合はあまり懲りすぎると一般ウケしない傾向があります。豪華さや楽しさはあっても、毎日暮らす場所という観点から、“落ち着かない物件”と判断されてしまいます。

 

そうなると、大幅に価格を下げたり、工事を一部やり直すなどして販売しなければならず、利益はおろか赤字処分せざるを得ないケースもあり、そのリノベーションは失敗扱いということになります。

市況の急変によって事業が回らなくなる?

先の項でもお話ししましたが、買取業者の多くは金融機関から融資を受けて物件を仕入れています。昨今のように、マンション需要が高い状況であれば、金融機関は積極的に融資することになります。また、市況に関わらず販売が順調な業者は、金融機関の印象も良いため融資を受けやすくなります。

 

しかし、想定以上に市況が悪化すると、金融機関は融資を引き締めるようになり、企業に資金が行き渡らなくなります。買取業者にとって融資は血液であり、融資が受けられなければ仕入れ(販売物件)が無くなってしまいます。物件のないところに客は集まらず、早晩倒産を余儀なくされます。かつて100年に一度と言われたリーマンショックが起きた時も、金融機関による貸し渋りや貸し剥がしが行われ、買取業者など多くの不動産・建設関連企業が倒産の憂き目に遭いました。

 

 

 

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