マンション売却の買取保証はイイとこ取りの有効な方法とは限らない!?

「買取保証」とは?

不動産を売却する方法としては、不動産会社に買主を探してもらう「仲介」と、不動産会社自身が買主となる「買取」という2つの種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、その仕組みを十分に理解した上でどちらかを選択する必要があります。

 

そんな中、不動産会社によっては仲介と買取を兼ねる形態を扱うところがあります。これは厳密に言うと、仲介による売却を依頼して一定期間内に買主が見つからなかった場合に、あらかじめ決めておいた価格で業者が買い取る「買取保証」という形態で、仲介と買取の両方を併せ持つ買取保証は、「売れないかもしれない」という売主の心配を払拭することができますし、買い取るだけの資金がある業者なら安心して任せられると考えるでしょう。

 

そんな“イイとこ取りの有効な方法”なら、すべての売却検討者が買取保証によって円満に売却できるはずですが、実態はそうウマくはいかないようです。

 

では、まず買取保証を知るうえで、押さえておくべき「仲介と買取の違い」を、表①にまとめましたので見て行きましょう。

 

【表①】

仲介と買取の特徴比較表

 

売主にとって最も気になるのは、「いくらで売れるか(売却価格)」、「いつ売れるか(売却時期)」で、上表の通り、仲介と買取ではその2点に大きな違いがあります。

 

当初、仲介で売りに出し、一定期間が過ぎると買取にシフトする「買取保証」を選択した場合、時期は確定されるものの30%~40%もの価格差が生じる可能性も出ます。仮に、相場が2000万円のマンションであれば、買い取りでは1200万円~1400万円になるのです。

買い取りを拒否される物件もある!?

前項の表にも記載しましたが、物件のなかには需要が十分に見込めて売りやすい物件と、問題を抱えていて売りにくい物件があります。

売りにくいとされる物件のチェック項目をまとめました。

チェックされる項目

・築年数

目安として築30年以上経過した物件(昭和56年5月31日以前に建てられた新耐震基準に適合しないマンションなど)。

・広さ(マンションの場合)

専有床面積が30㎡未満(ファミリータイプではない)。

・物件の現況

修繕を掛けても元がとれないほど、損傷が激しい状態。騒音・日当たり・臭気など環境に問題がある。

・地域

売買取引の事例が少ない地域、流入人口が少ない地域。 徒歩圏に小中学校がない地域。

・利便性

地方や郊外などにおいて、交通手段がバス便のみである。買い物、医療等の利便施設が整っていない。

・心理的瑕疵

物件内で自殺や火災の事実。
周辺に反社会的勢力や宗教組織の活動拠点が存在。
近隣に火葬場やゴミ処理施設の存在。
いわゆるゴミ屋敷や騒音トラブルなどの迷惑行為を起こす人が近所に住んでいる場合。

 

これらのいずれかに該当する物件は、たとえ低い価格で買い取りしても、販売で苦労することが予想されるため、場合によっては買取を拒否されるケースもあります。

 

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買い取りによる業者側のリターンが大きければ、仲介活動で手を抜かれることも!

買取保証をつけるということは、業者が対象物件を「買い取りに支障がない」と判断したという事です。営業的な言い方をすれば「買い取り後の再販売で十分な利益が確保できる」と見込んだ物件です。

 

業者が仲介によって得られる報酬は仲介手数料であり、成約の際は、物件価格の3%+6万円(別途消費税)となり、売主から売却依頼を受け、自ら買主を見つければ両方からその金額を得ることができます。でももし、買い取りによって仲介手数料以上の利益が見込めると分かっていれば、広告費を掛けてまで仲介販売に固執しなくなり、積極的な販売活動は行われなくなります。

下限価格を知っているため、労力を注いでまで高値の仲介を狙わない業者も!

買取保証によって業者が買い取りした場合、設備や内装などを一新するなどのリノベーションを施した後で販売を開始することになるため、ある程度の時間とコストが必要となります。業者のなかには、買取保証によって時間を掛けて利益を得るよりも、仲介によって手っ取り早く簡単に仲介手数料を得ようとするところも少なくありません。

 

ところで、買取保証では、前もって買取価格を決めたうえで仲介による販売活動がスタートします。ということは、業者は「主がここまでなら下げてもいいとする限度価格をすでに知っている」ということになります。

 

仮にも、売却依頼を受けた仲介業者ならば、少しでも高値で売却できるよう販売活動を行い、一定期間後にやむを得ず値引き交渉に対応していくような対応をとるべきなのですが、買取価格(下限価格)で手早くまとめてしまおうとする業者は、仲介活動の開始直後から値引きありきで対応する傾向があり、たとえ交渉余地のある購入希望者であっても平気で値引きに応じるなど、価格交渉を真剣にやらない業者が多いのです

買取保証よりも買取専門業者の方が高い値付けをしてくれる。

買取保証を付ける業者の多くは、仲介を本業としています。業者にとって仲介とは、売主(他人A)が所有する物件に買主(他人B)を客付けすることによって報酬が得られることから、“リスクを取らない業務形態”と考えます。もちろん、一定の広告費や調査費用が生じますし、決められなければそれまでの労力は無駄になってしまいます。それでも、業者自ら千万円単位の資金を、一時的とはいえ拠出する買い取りに比べたら、大した出費ではありません。

 

そんな仲介業者にとって、仲介から買取保証へのシフトは、利益獲得の時期が先延ばしになることを意味します。そこで業者は、仲介によって「買取専門業者」に買取保証金額で買い取ってもらい、買取専門業者から再販売の仲介業務を獲得しようと考えるのです。そうすれば、早期に仲介手数料を得られるだけでなく、その後の再販売による仲介手数料収入も見込むことができるのです。

 

買取保証とは、その名の通り「買い取る事を保証する」という“商品”です。 にも関わらず、自社が資金を拠出して販売するリスクを避け、その代わり他社に買い取らせて仲介販売で利益を得ようとなどという業者は、そもそも買取保証を掲げるべきではないでしょう。

 

ちなみに、「買取専門業者」とは、買い取りして再販売することが本業であり、原則として仲介業務は行いません。ということは、買取保証による売却だけでなく、買取専門業者に直接買い取ってもらう選択肢もあるのだということがわかります。この場合、買取専門業者は仲介業者を通さずに売主から直接買い取るため、少なくとも仲介手数料分は高く買い取ってくれる計算になりますし、交渉によって多少なりとも高く買い取ってもらえる可能性も十分に考えられます

 

こんな業者は要注意!

仲介業者が第一に目指すのは、媒介契約の獲得です。一般・専任・専属専任という3つの形態がある媒介契約のなかでも、特に専任もしくは専属専任の獲得を業者は目指します。なぜなら、複数の業者が販売窓口となる一般媒介契約とは異なり、自社が単独で売却の依頼を受託することにより、自社で買主を見つけて契約する「両手取引」のチャンスが広がるからです。そのため、実際の相場よりも高い査定価格を提示し、売主の興味を喚起して専任媒介契約を獲得しようとします

 

ところが、売主から「買取保証でお願いしたい」という要望が出ると、そもそも相場を無視した根拠のない高額査定であるため、そのままの金額で買取保証することはできません。そうなると、買い取りにあれやこれやと条件を付け、さっきまで力説していた高額査定から手のひらを返したように現実的な価格へと落としてくるのです。

 

また、業者が買い取って再販売するとなれば、一時的な資金拠出が発生したり利益確定時期が後倒しになったりします。そのため、確実に儲けが見込める物件以外は、買い取りしないよう逃げて仲介へ誘導する“看板だけの業者”も存在します。

まことに不動産業という専門性を笠に着た目に余る行為で、このような業者には依頼しない方が賢明でしょう。

買取保証を利用するならば、相応の覚悟は必要!

不動産の売主にとって、自分の物件は唯一無二の存在です。そのため、「査定価格が高い=正しい査定」と考えがちになります。一方で、買主にとっては、数ある物件の中のひとつであり、類似する物件なら、状態の良し悪しよりも価格の低い方に興味を持つ傾向があります。その点を踏まえ、売主から売却依頼を受けた仲介会社としては、売主の意向を反映して、販売開始当初は高めの価格で情報公開することになります。そこでタイミング良く買い手が見つかれば良いのですが、同エリア内で物件が重複していたり、売りずらい物件ですと、なかなか買い手は見つかりません。

 

そんな中で売主ができる事と言えば、価格を下げる事くらいしかありません。その値下げも一度で済めばよいのですが、二度三度となってくると経済的にも精神的にも追い込まれていってしまいます。そして、仲介での販売期間が終了すれば、買い取りへとシフトすることになります。「買い取りにはならないだろう。仲介で大丈夫」などと、相応の覚悟なしに安易な認識でいると、買い取り扱いとなった時に期待していた手取り金額が得られず、落胆することになってしまいます。

 

ですから、買取保証を検討する際は、買取金額での売却となる可能性もあるということを十分理解した上で、利用する必要があるのです。

 

 

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