3,000万円控除とは何かを理解してお得に不動産を売却しよう
不動産を売却したら税金がかかることをご存知でしょうか?そもそも不動産を売買する経験は一生に一度あるかないかですので、ご存知ない方も多いと思います。不動産売却で得た利益には「譲渡所得税」という税金が掛かり、税率も高めに設定されています。
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しかし、居住用の住宅であれば、「3,000万円までの利益は税金を0円にします」という特別控除があるのです。不動産を売却して3,000万円以上の利益を得ることはほとんどないので、大抵の場合は税金がかかります。今回は、この「3,000万円の特別控除」を受けられる条件などを詳しくお話します。
1.譲渡所得について知ろう
まずは、不動産の利益に当たる譲渡所得について知りましょう。不動産を購入したり売却したりすると、物件価格以外の諸費用がかかります。その諸費用も加味して譲渡所得を計算しなければいけません。
1-1譲渡所得の計算方法
計算式にすると以下のようになります。
「(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時の物件価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用)」
単純に、売却価格から購入した時の価格を差し引くのではありません。それぞれ諸費用を加味していることが分かると思います。購入時に差し引かれている「減価償却」については次項でお話します。
1-2減価償却について
難しい言葉に見えますが、簡単に言うと「不動産は劣化していくので、価値が年々下がります」という意味です。例えば、3,000万円で購入したマンションを5年後に売ろうとした時には価値が下がっています。ですので、キチンと価値が下がった分を差し引いて考えるという意味です。
計算方法は決まっており、物件ごとに「償却率※1」という数字を掛けます。償却率は耐用年数※2で違ってくるので、物件の種類で変わります。代表的な物件の償却率は以下の通りです。定率法や定額法の計算方法の違いや時期によって償却率は異なりますので、あくまで目安と認識ください。
・鉄筋コンクリートマンション 0.022※3
つまり、先ほど言った3,000万円で購入したマンション(鉄筋コンクリート造)は1年毎に「3,000万円×0.022」の計算で66万円分価値が下がっています。そのため、5年を経過すると330万円価値が下がる(減価償却される)ということになります。
※1 減価償却資産の償却率表
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070914/pdf/06.pdf
※2耐用年数一覧
https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34354.php
※3いずれも平成19年4月1日以降に取得 定額法を適用
1-3譲渡所得 具体例
実際に譲渡所得の計算をしてみましょう。以下のようなケースの場合です。
・売却時には180万円の諸費用がかかった
・このマンションは5年前に3,000万円でマンション(鉄筋コンクリート造)を購入した
・購入時には120万円の諸費用がかかった
「(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時の物件価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用)」に当てはめると、
「(4,500万円-180万円)-(3,000万円+120万円ー330万円※4)」となり、1,530万円が譲渡所得になります。
※4前項参照
2.「3,000万円の特別控除」について知ろう
それでは、本題の3,000万円の特別控除の話に移ります。冒頭で言ったように、不動産の利益(譲渡所得)が3,000万以下であれば、譲渡所得税は0円になるという特別控除です。仮に譲渡所得が4,000万円あり、この特例を適用できる物件だと、「4,000万円ー3,000万円」の1,000万円が譲渡所得という扱いになります。
2-1特別控除を受ける条件
特別控除を受ける条件はいくつかあります。詳しくは国税庁ホームページ※5をご覧いただきたいのですが、以下に要約しておきます。尚、以下に「住まなくなった日から3年目の12月31日までに」という文言が良く出てきますので、まずそれを解説します。例えば、2016年4月に住まなくなった(住民票を移した)とします。そうすると2019年12月31までが、この期間に該当します。
・上記で家を取り壊していた場合は、「取り壊した日から1年以内に売る」、「売るまでに貸駐車場など、その他の用途で利用していない」という2つの条件が更に付け加えられる
・売った年の前年、前々年にこの特例を含め他の特例を受けていない
・親子や夫婦など特別な関係がある人に対して売ったものでない。
気を付けなければいけない方は、「以前住んでいたが今は住んでいない」時や、「直近で不動産に関して何か特例を受けた」、「別荘などの娯楽施設を売る」時です。そんな時は必ず国税庁ホームページで確認しましょう。それでも分からなければ最寄りの税務署に相談することをお薦めします。
※5国税庁 マイホームを売った時の特例
https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm
2-2特別控除を受けられなくなる時は?
上記の条件に当てはまっていても特別控除を受けられない時があります。
例えば、「この特例を受けることだけを目的として入居したと認められるとき」や、「仮住まいなど一時的な目的で入居したと認められるとき」には、この特例を受けられないので注意しましょう。良くあるケースが、投資用で購入した不動産を売る時です。3,000万円の特別控除を適用させようと思い、一時的に住民票を移し「居住用」とすることは認められません。
そもそも住んでいるのはどう判断するのか?売った日、住んでいない事の証明はどうやってするのか?という疑問を持たれる方もいると思います。基本的には住民票や売買契約書などの公的に認められる書面で判断をします。仮に住民表を移して1ヵ月で売却するなどは、上記の「特例を受けるために一時的に入居した」と判断される可能性が高いです。
3.譲渡所得税について
譲渡所得が3,000万円以内で、上記の条件に当てはまれば税金はかかりません。しかし、条件に当てはまらない時や、当てはまっても3,000万円を超える場合には譲渡所得税がかかります。譲渡所得税の税率は2種類ありますので覚えておきましょう。
<長期保有の場合>
譲渡(売った)した年の1月1日時点で、その物件の所有期間が5年を超える時には長期保有の扱いになります。税額は所得税15%(復興特別所得税2.1%※6)、住民税5%になります。例えば、譲渡所得が1,000万円であった場合は、「所得税:150万円、復興特別所得税:3.15万円、住民税:50万円」の、約203万円の税額になります。
<短期保有の場合>
譲渡(売った)した年の1月1日時点で、その物件の所有期間が5年以下の時には短期保有の扱いになります。税額は所得税30%(復興特別所得税2.1%※6)、住民税9%になります。例えば、譲渡所得が1,000万円であった場合は、「所得税:300万円、復興特別所得税:6.3万円、住民税:90万円」の、約396万円の税額になります。
このように、長期保有か短期保有かによって税率が異なります。基本的には居住用の住宅売買を円滑に行うための法令だからです。いずれにしろ税率は高く、税額も100万円単位になる事が多いので、控除条件はキチンと見極めて申請をしましょう。
※6平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。3,000万円の特別控除を受けるためには様々な条件があります。しかし、特別控除が受けられないと税率が高いので、非常に高い税額を納めることになります。不動産の譲渡所得は、基本的に主たる収入ではなく副収入の扱いになるので税率も高いのです。
気を付けなければいけない事は、確定申告が必要ということです。売却した翌年の3月15日までが期限なので覚えておきましょう。家を売った人は、税務署から「マイホームの特別控除を受けるなら確定申告が必要」というハガキが送られてきます。今はインターネットで簡単に作成※7出来ますので、忘れずに申告しましょう。
※7国税庁 確定申告書 作成ページ
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/kakutei.htm
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