マンションを相続することになった場合は売却を検討?しっかりと対策が必要
マンションを相続する時には具体的に何を行い、何に注意をすれば良いでしょうか。相続人が一人でない時には特に注意をしなければいけない事がありますので、しっかり理解しておきましょう。
1.マンションを相続する時に行う事
1-1相続登記の申請
1-2相続時の注意点1
1-3相続時の注意点2
2.相続した不動産を売却すると税金がかかる
2-1印紙税
2-2抵当権抹消登記費用
2-3不動産譲渡所得税
3.相続不動産をどうするべきか?(居住、売却、賃貸)
3-1まずは査定をすること
3-2売却のメリット、デメリット
3-3賃貸のメリット、デメリット
4.複数の相続者がいる場合
4-1不動産処分方法を決める
4-2買取という選択
1.マンションを相続する時に行う事
まずは、そもそもマンションを相続した時には何をすれば良いのでしょうか。
1-1相続登記の申請
まずマンションを相続した時には、そのマンションを管轄する法務局に行き相続登記を申請する必要があります。相続登記とは、そのマンションの所有者を明確にすることです。相続登記を申請する期限は特にはありませんが、相続登記をしないと自分の所有物になりません。所有物にならないという事は、そのマンションを売却したり賃貸したり担保に入れてお金を借り入れたりすることが出来ないという事です。それだけではなく、登記をしていないと言う事は、「そのマンションを所有している」という権利が守られていないと言う事です。
登記自体はご自身でもする事が出来ますが、作成書類が煩雑であったり、申請手続きが複雑であったりするため非常に手間です。プロである司法書士に依頼するのが一番良い方法になります。
1-2相続時の注意点1
仮に、法定相続人が3人いる(マンションの持ち分は1/3)と仮定します。例えば、その1/3の権利を持っている一人が登記をしようと思えば、他の相続人の同意がなくても勝手に登記が出来てしまいます。つまり、自分の持ち分だけを売却したり賃貸したりする(1つの不動産を物理的に分ける場合などは難しいですが)という事も出来てしまうと言う事です。
他には、例えば3人いる相続人の内の1人に借金があったり、税金などを滞納していたりする場合、お金を貸している金融機関や税務署は相続できるマンションがあると判明した場合に、他の相続人の同意なしにそのマンションを差し押さえする事が出来ます。そうなると、その人の持ち分の1/3が差し押さえられてしまうというリスクが生じます。
つまり、法定相続人が複数人いる場合には、お互いの関係性やそれぞれの経済事情などは把握しておく必要があるという事です。
1-3相続時の注意点2
注意点の2つ目は、相続マンションを放置しないと言う事です。昨今、相続不動産を放置しているために「空き家」が社会問題になっています。相続したマンションを空き家にすることで、折角のマンションを税金だけ支払って有効利用出来ていない事も問題ですが、更に大きな問題としては防犯面からの危険性があり、諸費用がかかるという点です。
一戸建てよりもリスクは少ないとは言え、例えば誰も住んでいないマンションは不法侵入、不法滞在されてしまうかもしれませんし、放火をされてしまうという危険性もあります。更に、マンションでも一戸建てでも土地でも、不動産を所有していれば必ず年に1回、固定資産税がかかってきます。更に、マンションの場合には定期的に換気や水流などをケアしないと建物が傷んでしまうため定期的な管理が必要です。相続したマンションが遠方で管理しきれない場合には、費用を支払って不動産会社に管理を依頼する事もあります。
このように相続不動産を放置するという事は様々なリスクがあると言う事です。
2.相続した不動産を売却すると税金がかかる
相続した不動産を売却した時にかかる税金は、通常の不動産売却時にかかる税金と大きく変わりはありません。
2-1印紙税
不動産を売却する時に締結する契約書には印紙を貼付しなければなりません。その時にかかる印紙税は以下になります。※
・物件価格(税抜き)1,000万円超 5,000万円以下 印紙税20,000円
・物件価格(税抜き)5,000万円超 1億円以下 印紙税60,000円
※一般的な不動産価格のみを表示します。詳細は国税庁ホームページをご覧ください。
2-2抵当権抹消登記費用
抵当権とは不動産を担保に入れてお金を借りる時に、金融機関などが担保の証明として付保する権利の事を言います。もし、相続した不動産にローンが残っていなかったり、担保に入っていなかったりする場合には、抵当権の抹消費用はかかりません。
抵当権の抹消時にかかる税金としては「登録免許税」がかかります。その他にも手続きをする司法書士に支払う報酬も税金以外にかかってくる費用です。
2-3不動産譲渡所得税
相続不動産を売却した時にかかる費用としては、譲渡所得税が一番大きな税金になります。譲渡所得税とは簡単に言うと「売却した不動産に利益が出たらそれが『所得』になるので金額に応じて税金(所得税、住民税、復興特別税)を支払いなさい」という内容のものです。
・譲渡所得税の算出方法
基準となる譲渡所得額の計算式は「(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時のマンション価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用)-相続時にかかった費用※)」
例えば、以下のようなマンションを売却した時の譲渡所得は計算してみましょう。
→売却時の諸費用(仲介手数料や抵当権抹消費用など)200万円
※不明な場合は売却価格の5%
→購入時価格5,000万円
→購入時の諸費用150万円
※不明な場合は購入価格の5%
→減価償却費用630万円
→相続時の費用(相続税)1,000万円
「(6,000万円-200万円)-(5,000万円+150万円-630万円)-1,000万円」となり、譲渡所得額は280万円です。
※相続時にかかった費用(相続税)について
相続時にかかった費用(相続税)を計上するためには、相続開始日から3年10か月以内である必要があります。更に平成27年1月1日以降の相続で譲り受けた土地を売却した場合には、土地と一緒に一戸建て等を売却した場合でも土地の分の相続税しか計上できません。
・控除について
簡単に言うと居住用不動産(マイホーム)を売却して利益(上述した「譲渡所得額」)が出た場合については3,000万円までは税金はかからないという内容です。後述しますが、譲渡所得税はかなり高い税率ですので、もし不動産売却をして利益が出た場合の税金は高額になります。しかし、友人や知人で不動産を売却した人がいても税金を支払っていない方がほとんどだと思います。理由は、このようにマイホームを売却する場合には控除される額が大きいからです。
従って、もし相続した不動産に一定期間入居していた場合には、売却時に利益が出ても控除の対象になる場合があります。
※控除の特例を受ける場合の諸条件は国税庁ホームページで確認ください。
・譲渡所得税率について
税率は不動産の所有期間によって異なります。不動産を売却した年の1月1日現在で所有期間が5年を経過しているかどうかが分かれ目になります。5年を経過してれば税率(所得税+住民税+復興特別税)は20.315%になり、5年を経過してないのであれば税率は39.63%となります。
3.相続不動産をどうするべきか?(居住、売却、賃貸)
相続不動産に居住するべきか、売却するべきか、賃貸するべきかを迷われる方も多いと思います。広さやエリア的に居住したいという結論になる場合には問題ありませんが、資産として不動産を相続した時に売却をするか賃貸にまわすかは簡単に結論は出せません。
3-1まずは査定をすること
いくらで売却できるか、いくらで賃貸にまわせるかは査定をしてみない事には分かりません。まずは両方のパターンで査定をしてみましょう。近所の不動産会社に直接依頼する方法もありますが、今ではネットから査定依頼を行えるのでそちらを利用する方が良いでしょう。信頼出来る不動産会社が見つからない場合は、複数の会社に見積もりを取る事により相場の基準も分かりますので一社ではなく複数社に査定を依頼する事も検討しましょう。
3-2売却のメリット、デメリット
売却のメリットはその後の不動産管理運用をしなくて良いと言う点と、不動産によってはまとまった収入が入るという点です。不動産を所有しているだけで税金がかかり、定期的に管理をしなければいけません。その管理運用の手間がかからないという点と、売却価格・諸費用と鑑みてですが、不動産利益というまとまった収入が入るという点が売却時のメリットです。
デメリットで言えば、相場環境で変動すると言う点です。勿論、賃料も相場環境で多少変動はしますが、売却価格の方が景気動向や周辺物件の変動に激しく影響されます。つまり、売却するべきタイミングを見極めにくいと言う点がデメリットとして挙げられます。
3-3賃貸のメリット、デメリット
賃貸のメリットは定期的に賃料収入を得られる上に、何年か賃貸で回した後、(売却価格と諸費用によりますが)売却益も得る事が出来ると言う点です。賃借人が途切れなければという前提ですが、月々安定した収入が得られる点は大きなメリットと言えます。デメリットは売却時とは逆で管理運用をし続けなければいけないと言う点です。賃借人との交渉や、入居者入れ替えの際の立会い、修繕、税金の支払い、確定申告などの事務作業も加わってくるので手間がかかります。
自分自身、不動産の管理運営に割ける時間がどの程度あり、今まとまった収入が欲しいのか、定期的に安定した収入が欲しいのかによって賃貸、売却を判断するのが良いです。
4.複数の相続者がいる場合
相続人が複数いると言う事は、不動産の名義人も複数いると言う事になります。そうなると売却時にも賃貸時にも名義人全員の同意が必要になるので、非常に手間がかかってしまいます。
4-1不動産処分方法を決める
例えば、相続人の内の一人はまとまったお金が欲しいから「売却」を主張し、一人は安定した収入が欲しいので「賃貸」を主張した時には平行線を辿ります。仮に意見が合わずにズルズルいくと、その間に不動産を管理する費用も掛かりますし、税金もかかってきます。
仮に、例えば全員一致で「売却する」と決まった場合でも、一方は「3,000万円以上でないと絶対に売らない」という意見で、一方は「とにかく早く売却したいので2,500万円以上であれば売却して良い」という違う意見であった場合も仲介する不動産会社は大変です。折角購入希望者を現れたとしても、売却者同士で意見が割れている事により購入希望者が検討を見送ってしまうかもしれないと言うリスクもあります。更に、意見が食い違っているので購入検討者が現れる度に親族同士で揉め、関係が悪化してしまうという懸念もあります。
4-2買取という選択
上述のように、不動産売却は手間がかかり、不動産の売却が長期化すると相続人同士の関係が悪化する可能性もあります。そこで「買取」という選択肢も視野にいれてみてはいかがでしょう。買取とは、一般の方ではなく不動産会社が不動産を買取り、不動産会社が売主となり再販する事を言います。不動産会社も買い取った後に売却をしなければいけないので、相場よりは安く買い取らないと利益が出ません。つまり買取は相場の7~8割、場合によっては6割程度の価格になると言う事です。買取のデメリットはこの「金額」にありますので、その金額が受け入れられるかどうかが鍵になります。
買取を選択すると不動産会社が購入者になりますので、もし瑕疵(欠陥)があった時にも責任は追及されませんし、最短で2週間程度で現金化できるので、その現金を持ち分割合に応じて分配すると言う「分かり易さ」があり相続人同士で揉めるリスクも軽減できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。不動産の相続については名義の問題や、その不動産をどうするかという問題が出てくるので、現金や他の金融資産と比べて煩わしい事が多いです。しかし、現金で持つよりも評価額が下がり相続税の節税になるということもあり、不動産を相続するケースは多いです。
まずは相続人同士や司法書士、弁護士を交えて話し合いをすることが大切です。上述のように色々な選択肢があるので色々な意見が出てきてまとまらないケースがあります。第三者を交えて不動産をどう処理するかを相談して曖昧なまま終わらず決定する事が大切になります。
※記載の税率などは時期により変動します。詳細は国税庁ホームページをご覧ください。