【売却体験談】あまり欲張るとマンション買い替えは失敗するかもしれない

山田 実さん(仮名)43歳は、都内の大手企業に勤務するサラリーマン。川沿いで、眺望のよいタワーマンションに住んでいます。10年前にローンを組んで購入した1LDKの部屋は、これまで妻、弘子さん(仮名)と二人で住むのに広いとは言えませんが十分でした。

 

しかし昨年、弘子さんが妊娠、予定外の妊娠でした。弘子さんは広告関係の会社に勤めており、キャリアを優先し、子供は作らないつもりだったこともあって1LDK の部屋を購入したという経緯がありました。妊娠を知った弘子さんは仕事をどうするか悩みましたが、会社の産休制度を利用して子供を産むことを決めました。子供を産むことには夫の実さんも賛成し、弘子さんは10ヶ月後に無事、健康な男の子を出産しました。当初は子供をもうけないつもりだった山田さん夫婦でしたが、いざ子供が生まれると、やはり我が子は可愛く、子供中心の生活になっていきました。

マンションの売却理由

幸せな子供中心の生活が続く中で、実さんは1LDKという間取りと狭さが気になりだしました。夫婦二人で生活するには、ちょうどよい間取りでしたが、子供の成長を考えると最低でも2LDK、できれば3LDKくらいの間取りのマンションに移りたいと考えるようになりました。しかし、今住んでいるマンションのローンがまだ残っているので、先に新しいマンションを購入してしまうと一時的ではあるもののダブルローンになってしまいます。ローンの審査や頭金、初期費用のこともあり、今住んでいるマンションを売ってから、新しいマンションを購入することにしました。今住んでいるマンションが売れるまでに、新しいマンションを見つけてスムーズに買い換えたい、それが実さんの考えでした。

参考:「買い替え」の際のマンション売却は計画的に行う必要がある

売却を検討。まずは査定を申し込む

しかし、マンションを購入した経験はあっても、売却した経験の無い実さんは、何処に仲介してもらえばよいか迷います。まずは現在のマンションがいくらで売れるのか査定してもらうことにしました。

参考:マンションの売却(買取)を依頼した場合の流れを理解しよう

 

実さんの頭に浮かんだのは雑誌の広告などでよく見かける有名な大手不動産業者のA社。実さんはA社に電話し、査定を申し込みました。次の日曜日には、A社の営業マンが査定にやってきました。営業マンは50代後半で、愛想がよく、経験豊富で信頼できそうな人物でした。3日後、営業マンから電話があり査定額が伝えられました。

 

現在のローンを全て返済でき、新しく買うマンションの頭金、初期費用もまかなえそうな金額でした。思っていたよりも高額な査定で、実さんはその金額に満足でしたが、念のために他の業者にも査定をしてもらうことにしました。わりと近所にある中小不動産業者B社が、新聞にチラシを入れていて、大手ではないものの地元の不動産業者だったのでB社に査定を頼むことにしました。B社の見積もりはすぐに出ましたが、A社の査定の8割ほどの金額でした。B社の査定結果を聞いた実さんは、迷う事無く査定額の高いA社に自宅マンション売却の仲介を申し込みました。

<参考>

マンションを売却したいと思ったら、まずは査定。その方法とポイントを押さえる

マンション買取の査定は複数の業者に依頼をする方が良い

 

売却活動を開始。しかしなかなか決まらない

それから2ヶ月、自宅の中を見てみたいという内覧希望は2組だけで、マンションは売れません。その間、実さんと弘子さんは新しいマンションを探していました。中央線沿線や京王線沿線、小田急線沿線を中心に、新築マンションのモデルルームや中古物件を休みごとに見てまわり、これはという物件をひとつ見つけていました。その物件は京王線沿いで3LDK、駅から徒歩7分、中古だが築3年のまだ新しくきれいなマンションでした。現在住んでいるタワーマンションのような眺望はありませんが、南向きで日当たりもよく、小さいながらウォークインクローゼットも有り、近所には公園もありました。子供を育てるには良さそうな環境です。

 

しかし、現在のマンションがまだ売れていないという状況では、ダブルローンになってしまいます。それに、頭金や初期費用を考えると、現在のマンションが先に売れないと購入の申し込みは出来ません。実さんと弘子さんは、現在のマンションが早く売れてくれることを願うばかりでした。

仲介業者から値下げの提案がきた

そうこうするうちに、半年が経ちました。現在のマンションはまだ売れません。マンションを見たいとA社の営業マンが連れてくる購入希望者も1ヶ月に1組あるかないかです。本当にこのマンションが売れるのだろうかと心配になってきていた実さんの元にA社の営業マンが連絡をしてきました。翌日、自宅にやってきたA社の営業マンが口にしたのは売り出し価格の値下げの話でした。この金額のままでは売れる見込みがないので、当初の金額から値下げしてみないかという提案でした。

 

A社の営業マンが提示したのは現在の8割ほどの額、B社が査定した金額とほぼ同じ額でした。あたらしい購入希望の物件も見つけていて、早く売りたいという気持ちはありますが、2割も金額を下げることに実さんは抵抗がありました。実さんはA社の営業マンと話し合い、金額を1割下げることにしました。

値下げを実施後に申込みが入る

価格を下げた後、実と弘子が住むマンションを見たいという購入希望者は多少増えました。しかし、マンションが売れないまま3ヶ月が経ち、A社の営業マンが再度実さんの所へやってきました。再度の値下げ提案です。現在のマンションを売り出してもうかなりの時間が経ちます。実さんも、多少安くても早く売りたいという気持ちが強くなっていました。話し合いの結果当初の価格より2割安い金額、最初にB社が査定した金額と同額まで値下げすることになりました。

 

思い切って価格を下げたことが功を奏し、実さんと弘子さんが住むマンションに対する問い合わせは増え、部屋の中を見たいという購入希望者も毎週末マンションにやってくるようになりました。その中から、60代の夫婦がリタイア後の住居として是非検討したいと有力な購入希望者として現れました。

 

これで、新しいマンションを購入できると思った実さんと弘子さんでしたが、これはと思っていた京王線沿いの3LDKの物件は既に売れてしまっていました。実さんと弘子さんは、その物件をとても気に入っていたので、その後、別の物件を探しておらず、二人の新居探しは振り出しにもどりました。

しかし結局賃貸に住むことに

実さんと弘子さんは新しい新居探しを始めましたが、すぐに、今住んでいるマンションが売れました。購入するのは見学にきた60代の夫婦でした。売れたマンションの引き渡しは4週間後ということになりましたが、新しい新居はまだ見つかっていません。その後、急いで新居を探しましたが、マンションの売却額を下げたため新居探しの予算も下がり、購入したかった京王線沿いのような魅力的な物件はなかなか見つかりません。引き渡しまであと2週間となっても新居は見つからず、実さんらは新居が見つかるまで一時的に賃貸物件を借りることになってしまいました。

 

その後新居が見つかるまで4ヶ月かかり、新居に入居したのは5ヶ月後でした。結局、山田さんは住んでいるマンションがなかなか売却できなかったために、新居に移る前に賃貸住まいをせざるを得なかったのでした。

マンション売却のポイント

今回の場合、A社が有名な大手不動産業者ということと、査定金額が高かったということでA社に仲介を頼んだのですが、結果的には失敗だったと言えるでしょう。最終的にはB社が査定した金額で売れたということを考えれば、A社の査定額は高すぎたと思われます。もしかしたら、A社の営業マンは仲介の契約が欲しくて高い査定額を提示したのかもしれません。

 

それに対してB社は有名大手業者ではありませんが、初めから妥当な金額で査定していたという事になります。有名な大手不動産業者ということでA社の高い査定額で売り出したわけですが、最初からもっと妥当な金額でマンションを売りに出していれば、山田さんのマンション買い換えはもっとスムーズなものだったと思われます。

 

不動産売却の際は、もちろん高い金額で売却できることに越したことはありませんが、高い価格で売り出しても、売れないのでは意味がありません。今回のケースは、有名で大手の不動産業者だからとか、ただ査定額が高いからといって、その業者に仲介を依頼するのではなく、適切な金額で仲介を依頼することが重要だという例でしょう。不動産の適切な価格というのは素人には判断が難しいものですが、査定金額が高いからという理由で不動産売却の仲介を依頼することは要注意です。

参考:売却が難しいマンションとはどんなマンションなのか?

 

注:こちらの売却体験談はスマート買取の体験談ではなく、マンション売買のご経験者にお伺いした内容です。

 

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